hogehoge, world.

米国カリフォルニアのソフトウェアエンジニアがIT・自転車・音楽・天体写真・語学などについて書く予定。

アメリカ英語の発音ノウハウ (5) ~ 舌の筋肉の使い方・Quick American Glide編

前回に続き、同じく舌の使い方というテーマで Quick American Glide の話をします。これは前回の "r" に比べたら全然簡単なはずなので楽に臨んでください。

Quick American Glideとは、二重母音[ai][ɔi][ei][au][ou]を出す際の舌の動きです。これらの二重母音は我々日本人には母音を並べただけにしか見えなかったり、「ペーパー」「コート」のように単なる長音として認識されちゃったりするので存在感薄いと思いますが、実はかなり頻繁に登場します。例えば "I'm fine right now." とか "My name's Jane." とか "I'd like my coat." とか、これらの二重母音だけで結構文章書けたりもするわけで、これを英語流のやり方で発音できるかは発音全体の英語っぽさに十分に効いてきます。

まずは "I'm fine." に登場する[ai]が最もわかりやすいので、これを例にとって説明しましょう。

まず音の出だしは[α]で始めます。(厳密には[α]と[a]は違うらしいのですが、ここでは舌の動きを掴みたいのでとりあえず気にしなくて結構です。) そして[α]の音を「ア~」と出したまま、下図のように舌の奥だけを上にゆっくり持ち上げて、普段[i]の音を出す位置まで持ってきてください。このとき舌の奥の動きに意識を集中し、口の周りなど顔の他の部分に余計な力を入れない(イの口のかたちを作ったりしない)ようにします。

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どうでしょう、この舌の奥の動きだけで音が「ア~」から「~イ」へと勝手に変化するのがわかりましたか?ハイ、これがアメリカ英語流の[ai]の出し方、Quick American Glideです。

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アメリカ英語の発音ノウハウ (4) ~ 舌の筋肉の使い方・"r"編

前回は顎の周りをがしがし動かすという筋トレ話でしたが、今回は舌の奥の筋トレです。

舌のホームポジションを下げ、顔の後ろ側の筋肉を主に使うという時点で、必然的に舌の奥の筋肉が動くようになるのを既に感じている(舌の奥に疲労を覚える)方もいるかと思います。今回はその動きをより激しく使う "r" の音、続いて Quick American Glide と呼ばれる舌の動きを通して、「いかにもアメリカ英語らしい舌の使い方」を掴みましょう。

それでは早速 "r" のやり方です。結論から言うと、下図のように舌の奥を後頭部の方向(もしくは口蓋の後ろの壁)に向かってえいやっと引き上げるのが "r" の動きです。(なおこの図は舌をどう意識的にコントロールするかを伝えるためのものであり、実際の舌のかたちを正確に表しているとは限りません。)

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図の矢印のあたりに意識を集中して動かし、舌先の方は勝手についてくるのに任せます。学校で「"r" は巻き舌で云々」と習った人もいるかと思いますが、それは完全に忘れてください。「巻く」という余計な力を加えずに、舌の奥だけを動かしてください。

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アメリカ英語の発音ノウハウ (3) ~ 顔の筋肉の使い方

前回の舌のホームポジションに続き、今回は顔の筋肉の使い方の話をします。ポイントは、唇の周りの筋肉を緩め、頬の後ろ側・顎の付け根のあたりの筋肉を使うことです。*1 

最初にちょっと実験をしてみましょう。アナウンサーになる訓練のつもりで、「口をはっきり動かしながらしゃべる」というのを日本語でやってみてください。大きな声である必要はなく、早口言葉を頑張ってはっきり発音するような感じです。そして自分が口のどこを動かしているか、よくみてください。おそらく唇の周辺をムキになって動かしているのではないでしょうか?そのあたりが普段日本語をしゃべるときに使われる(力が入って緊張した状態になる)筋肉です。

英語をしゃべるときには、その唇周辺の筋肉を緩めて、代わりに頬や顎の後ろの方の筋肉をがしがし動かします。(さらに舌の奥の筋肉もがしがし動かすのですが、そちらは次回扱うので今は忘れておきましょう。) 下図で言うと、我々が普段使っている赤いエリアを緩めて、青いエリア(咬筋と呼ばれる筋肉とその周り)を意識的に使います。口の前の方のかたちはその後ろ側の動きの押し引きによりつられて変わるようなイメージです。(この図は私が「こんな感じと思うと習得の役に立とう」と考えるものであって、学術的に正確だとは限りません。)

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*1:なお、これはアメリカ英語の特に特徴的なところだと思います。イギリス英語はもっと唇も使ってるはずです。しかしイントロで述べたように、ここではアメリカ英語の話しかしませんし、英語という言葉はアメリカ英語の意味で用いています。念の為。

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アメリカ英語の発音ノウハウ (2) ~ 舌のホームポジション

 

イントロに続いては3つのノウハウのうち最重要項目、舌のホームポジションの話をします。

言葉をしゃべっているとき、無意識に舌はある所定の位置を基準に動き、しゃべるのを休んでいる間はその所定の位置に戻っていきます。タイプライターにおける手のホームポジション(左右人差し指をfとjに置く)と似たようなものです。これを舌のホームポジションと呼んでみましょう。

我々日本語スピーカーの舌のホームポジションをよく見てみると、これが実は結構高い位置にあることがわかります。人によって個人差はあるのだと思いますが、私の場合、口蓋(口腔の上の面)すれすれか、上歯茎のあたりに触れていることも多いです。

これが英語スピーカーの場合は全然違う位置になります。下図のように舌の奥が下がっており、口を開けたらのどちんこが見えるくらいです(日本語の場合は舌が邪魔で見えません)。この位置を基準に舌を動かせることが重要です。

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アメリカ英語の発音ノウハウ (1.5) ~ 元ネタ発見?!

ノウハウ解説本体に入る前に割り込み。

前回「資料の出所はもうわからない」と言いましたが、知人(OpenNI本でお世話になった秀和システムの編集さん)が見つけてくださいました。さすがプロ!

1987年発行のこの本のようです:

The Sound & Style of American English for All Speakers of English as a Second Language by David Alan Stern

現在は第3版になっており、タイトルが若干変わっています:

The Sound & Style of American English Third Ed.: Dr. David Alan Stern

タイトルから「第二言語としての学習者のために」がなくなっていますが、レビューを見る限り同じ内容はカバーされているようです。業者によっては日本への発送もできるようなので、私の解説で満足できない人、正確に学びたい人は買ってみるのもいいかもしれません。

アメリカ英語の発音ノウハウ (1) ~ イントロ

アメリカ英語の発音についてシリーズ記事を書いてみようと思います。

おそらく10年以上前だったと思いますが、アメリカに住んで英語の勉強をしているとき、確か "THE SOUND AND STYLE OF AMERICAN EINGLISH: INTONATION & SYLLABLE STRESS" というタイトルの資料をたまたまネット上で発見しました。それは印刷物を低解像度でスキャンしたような汚い資料で、アメリカ英語における舌の位置や口の筋肉の使い方が詳細に説明されていました。例えば「舌の基準位置は言語によって違います。アメリカ英語ではこれこれこんな位置です。非英語圏の人には難しいのだけれど、まずは無意識にこれができるようになりなさい」って書いてあって、実際にやってみると本当にちゃんと周りのアメリカ人と同じ音になるんですね。日本の学校では「[ə]は力を抜いて軽くアと言う」とか「[æ]はエとアの中間」とか教えられてたわけですが、なんて幼稚な教え方してくれたんだコノヤロー、と思うくらいのブレークスルーが一瞬にしてもたらされました。

このノウハウ、私としては一人でも多くの日本人英語学習者に知って欲しいもので、本来なら資料のURLでも紹介したいところなのですが、残念ながらそのURLはすでになくなっています。タイトルでググってもそのものずばりは見つかりません。(→後日元ネタが見つかりました!)

というわけで、このノウハウを私自身の記憶と解釈に基づいて書いていこうと思います。スタンスは次のような感じで:

  • 私は英語や言語学は好きですが決して専門家ではないので、学術的には不正確なことを言っている可能性があります。それでも「自分はこう理解することでブレークスルーを得た」というところをあまり神経質にならずに紹介していこうと思います。最終的には各自が納得いく理解を自分自身で構築していってください。
  • 私個人は、実のところ発音の正確さはアメリカ英語でのコミュニケーションにおいてそんなに重要ではないと思っています。アメリカは移民の国であり、へたくそな英語も比較的受け入れられやすく、発音の正確さより論理性や明示性などもっと重要な要素があるからです。ただ、発音の基本原理の理解が欠如していると、自分自身フラストレーションがたまるし、リスニング力も上がらない(再生の仕方がわからない音は聞いても理解できない)と思うので、そこを解消するあたりを目標とします。
  • ネイティブスピーカーの発音を聞かずに書かれていることだけを練習しないでください。私はそこまで洗練されたノウハウや練習方法は書けません。ちゃんとネイティブスピーカーの発音を聞いて「ああ、確かにこうすると彼らの音に近づくなあ」ということを確認しながらトライしてください。
  • 単に「英語」と言ったときにはデフォルトで「アメリカ英語」を意味すると思ってください。

具体的には次の3つのノウハウを紹介していきます。件の資料の第1章に書かれていた、私に最も大きなブレークスルーをもたらしてくれた最低限のポイントです(これに比べたら第2章以降はどうでもいい話だったので全然覚えていません)。主に母音の共鳴の作り方の話です。

  1. 舌のホームポジションを英語モードにする。舌の奥を低く下げ、口を開けたらのどちんこが見えるくらいの位置にする。
  2. 顔の筋肉の使い方を英語モードにする。顔の前方(唇の周り)の筋肉を緩め、後方(顎の周り)の筋肉を使う。
  3. 舌の奥の動きを大きく使う。rとか二重母音とかで重要。

他にもいろいろなノウハウはあると思いますが(例えばリズムやアクセントの話、各子音の話など)、私があまり特徴のあることを語れない話題についてはあまり触れないことにします。それらは他の教材を見てもらった方がよいと思いますので。もしくは、興味のある話題があれば質問していただければできる範囲で拾いたいと思います。

続く

HoloLensがやってきた

Microsoft HoloLensをゲットしました!ヽ(´ー`)ノワーイ

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以前Kinect, Oculus Rift DK2, Google Glass, ...といったモーションセンサー・VR関連技術をフォローしていたのですが、最近HoloLens界隈が妙な盛り上がりを見せている様子だったので、久しぶりに祭に乗ってみるか!と腰を上げた次第。値段が高いのでかなり迷いましたが、どうせ乗るなら今でしょ、ってことで日本リリース1/18の直前に注文、1/19の午前中にさくっと配達されました。

というわけで所感を書いてみます。

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