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米国カリフォルニアのソフトウェアエンジニアがIT・自転車・音楽・天体写真・語学などについて書く予定。

日本語教育能力検定試験(2019年)を受けた ~ 素人的解説速報 試験I 前半

前回まで日本語教育能力検定試験の体験記を書いてみたが、 私自身過去問の解説にはだいぶお世話になったので、恩返しとして「誰よりも早い解説」を書いてみる。ただし:

  • すべて裏を取る時間はないので、自分の解答とアルクの解答速報を照らして、基本的に「私はこう考えた」を書いていく。したがって間違った内容を書いている可能性も高い。
  • 山勘で選んだものは正直にそう書くことにする。これは私個人の「こんなもん答えられなくてもいいんじゃね?」というメッセージだと思って欲しい。

まずは午前中の試験Iから。

問題1

(1) 5: [o]だけ円唇。他[a][i][ɯ][e]は非円唇。

(2) 3: 「完治(かんち)」だけ撥音がn-ch、つまり舌をchの位置に置いて鼻音を出している。他「干拓」「貫通」「関東」「官邸」はn-tやn-tsなので舌はtの位置にある。

(3) 1: 「月火水」の「火」は「か」から「かあ」と2拍に変化する。他は常に2拍。

(4) 2: 「9人」の「9」だけ「く」「きゅう」の両方で読める。他「9歳」「9個」「9本」「9回」は「きゅう」のみ。

(5) 3: これだけ「台吹く」。他は「耳当てる」「下敷く」「膝掛ける」「前書く」。

(6) 4: これだけ「心持ちよう」。他は「かばん持つ」「金持つ」「所帯持つ」「力持つ」。

(7) 1: 「はしかで休む」の「で」だけ原因。他「メールで送る」「日本語で話す」「遠近法で書く」「新幹線で行く」は手段。

(8) 2: この「持ってかえる」だけ複合動詞、他「座ってみる」「飾ってある」「忘れてしまう」「見えて来る」は動詞+補助動詞…だよね?

(9) 5: 「院長はあの人だ」だけ「院長」と「あの人」が交換可能、他「私の先生は男の人だ」「山田さんは医師だ」「あの人は冷淡だ」「議長は有能だ」は交換不可能。

(10) 4: これだけ対象を持つ動作なので「X見られた」、他は生産活動なので「Xによって生み出された/建てられた/作られた/描かれた」。

(11) 5: 「週末にレストランを予約した」だけ「週末」が予約の内容(つまり将来の時点)。他「週末に映画館へ行った/ドライブをした/一人で残業した/ケーキを買ってきた」は動作が行われた過去の時点。実はこれも「予約という動作が週末に行われた」という解釈も可能なので微妙と言えば微妙。

(12) 2: 「本の好きな子供」の「の」だけ「好き」の対象で、「が」や「を」に置き換え可能。他「あなたの決心」「バッグの値段」「彼の態度」「友人の娘」は所有/所属の「の」。

(13) 3: 「今日から生まれ変わるんだ」の「~んだ」だけ決心。他は気付き。

(14) 1: 「彼が来たところで状況は変わらない」の「~ところで」だけ「~としても」の意味。他の「ところ」はタイミング。

(15) 4: 「意欲が高められる」の「~られる」だけ受身。他は自発。

問題2

(1) 3: 例題は拗音を普通の「やゆよ」で発音する誤り。3だけ拍の長さの誤り。

(2) 4: 例題はアクセントの誤り。4だけ拍の長さの誤り。

(3) 3: 例題は受身を使ってしまう誤り(誤: 感動された⇒正: 感動した)。3だけ助詞の誤り(誤: たくさん誤りが⇒正: たくさんの誤りを)。

(4) 1: 例題は「ですから」や「なので」を使うべき因果関係を「そこで」と言ってしまう誤り。1だけ「そこに」を「そこで」と言ってしまう誤り。

(5) 4: 例題は放置を表す「おいて」の欠落(誤: 置いてください⇒正: 置いておいてください)。4だけ助詞の誤り(誤: まで⇒正: までに)。

問題3A

(1) 4: 吸着音は日本語にない…というか何それ?(笑)。1の摩擦音はs等、2の弾き音はr、3の接近音はyで存在する。

(2) 1: これ以外は何か変。2はささやき声のときは声帯は振動してないはず、3は息を吸うときは声門は開いているはず、4は息もれ音がするときは声門が狭く開いているはず。

(3) 2: 歯茎ふるえ音は、スペイン語やロシア語にある舌を震わせる音で日本語の共通語にはない。1の両唇破裂音はp、3の硬口蓋接近音はy、4の声門摩擦音は「はへほ」のhで存在する。

(4) 4: 「気流の流れを妨げるか妨げないか」が母音と子音の定義そのものだったと記憶。そのものずばり知らなくても2は調音点、3は調音法っぽいので絞り込みは可能。

(5) 3: 中国語とベトナム語。正解をずばり知らなくても、日本語や英語やスペイン語にそんなものはないだろうと気付けば2択や1択に簡単に絞れるのは出題者のやさしさ。

問題3B

(6) 2: 音と意味との間に必然的な関係はない、ときたらソシュールの恣意性。

(7) 1: トントンやコンコン vs. ドンドンやゴンゴンの対立を考えれば清音/濁音だろう。

(8) 3?: 1や4は擬音っぽいので脱落、2と3の間で迷う。2の「しぶしぶ」は「しぶい」「しぶる」が語源なので他と成り立ちが違うっぽい*1、というわけで3を選択。

(9) 4: これ以外は逆のことを言っていたり簡単に反例が思い付いたりする。

(10) 3?: 1と2は「ざらつく」「ざわめく」があるので脱落。私は3「なる」と4「ばる」の2択を絞り込めなかったが、アルクの速報は3。うーん、「しゃちほこばる」とかいう言葉は思いついたけど、これ擬態語関係ないよね?

問題3C

(11) 3: 「より」は助詞。他の選択肢を見ると、1の「のだ」は助動詞入ってる、2の「もう」は副詞、4の「こと」は形式名詞、とわかりやすいので消去法も容易。

(12) 4: これが取り立て助詞の定義そのものだったと記憶。

(13) 1: 常識的に1「並立」か2「共起」の2択だろうが、共起は使う局面が異なる用語なので1を選択。

(14) 4?: 私は1か4の2択を絞り込めなかったが、アルク速報は4。「頭」「薬」ではなく「頭を冷やした」「薬を飲んだ」を取り立てている、ということか。

(15) 2: これ以外はなんか変。1は「たとえ子供でも」があるし、3は「特別な文脈」が余計だし、4の「まで」はむしろ連続性があるときに使うもの。

問題3D

(16) 4: 認識的モダリティ「にちがいない」「はずだ」は、文頭に判断中の「うーむ、」を付けて違和感がない。同じく「うーむ、」を付けられるのは4の「まい」。

(17) 2?: 私自身はハズしたが、アルク速報は2。「にちがいない」は自分の確信なので主観的、「はずだ」は論理的帰結なので客観的、ということか。

(18) 1: この「めったに」は「ない」にかかっており、モダリティに対してではない。他は2「どうやら~らしい」、3「まさか~ね」、4「きっと~よ」とモダリティに対してかかっている。

(19) 2: まず次の(20)から解いた方がいい。「なくてはいけない」「てもいい」の前にタ形は来れないので2。1や4は「私は~なくてはいけない」と言えるのでおかしいし、3は後続の関係が逆。

(20) 4: 拘束(必要)と免除(許可)のペアは4の「なくてはいけない」「てもいい」。

問題4

問1 2: この中で一番社会的っぽいのはボランティア活動。他も社会と関係はあるが1は人だし、3と4はmaterialisticな感じ。

問2 1: ひねらず常識的にティーチャー・トークを選択。

問3 2: 指示質問とは何か、私は覚えてなかったが、アルク速報は2。ふーん。

問4 4: まともなのはこれ、「教案作成段階でよく計画しておけ」といういつものパターン。1は負担軽減に逆行する、2はあまりに限定的、3は無計画でいいはずがない。

問5 1: まともなのはこれだけ。他はわかりやすくおかしな記述が入っている。

問題5

問1 1: アルク速報はこれ。私はこれを技能ではなくタスクに分類して早々に選択肢から落としたのではずしてしまった。

問2 3: 文法のように抽象度の高い構造的なものは時世の影響を受けにくいと言える。話題、場面、語彙のような具体的でリアルなものは時世と密接な関係があり、つまり影響を受け易い。

問3 2: これ以外はおかしい。1と3はハードル高すぎ、4はハードル低すぎで能力を伸ばせない。

問4 4: 中級ではモダリティや心的態度はむしろ使いこなせるようになってもらわなくては。

問5 2: 真正性って何だっけ?と思いつつ、2だけが生教材の本来の目的と関連した利用法なのでそれを選択。他はその教材を用いる必然性がない。

 

後半に続く

 

*1:さらに調べてみたところ、この「オノマトペに見る漢語の影響 : 和語系オノマトペと漢語系オノマトペの関わり」という論文によれば、天沼寧による擬音語・擬態語辞典では「名詞・副詞・動詞の連用形・その他の品詞の一部などを二つ重ねて畳語にしたもの」は「形はにているが、擬音語・擬態語としないもの」とされており、その具体例として「しぶしぶ」が挙げられているとのこと。またこちらの「日本語オノマトペ語彙の語源について」という論文も、もともとオノマトペとして成立した真正オノマトペとそうでないものを区別している。