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米国カリフォルニアのソフトウェアエンジニアがIT・自転車・音楽・天体写真・語学などについて書く予定。

Kindleで読める(竹田青嗣・西研の)現象学の本

エトムント・フッサール現象学とは、近代哲学の一分野で、人間が普段「世界とはこういうもの」とあたりまえに思っている確信がどう成立するのかを解明し、信念対立の克服や共通認識の確立を目指す学問あるいは方法論である。筆者が以前書いたこんな記事(「日本人が「在宅勤務は生産性ダウン」と感じる理由」)現象学的内省に基づいている。

実は筆者が「…である」などと言ってしまうのは語弊があるかもしれない。より正確には、竹田青嗣西研といったフッサール現象学をそのような視点で紹介・解説している人たちがいて、筆者は彼らの著作を読んで現象学を理解し、日常的にツールとして役立てていますよ、ということだ。彼らの現象学解説には、ガチ哲学者視点からは「独自解釈を入れすぎている」「これはフッサール現象学ではなく竹田現象学だ」などと批判もあるということを一応言っておく。現象学の「日常的に役立つツール」としての側面に興味があるのであればあまり気にしなくてよいだろう。*1

さて、その(竹田・西の)現象学を知るにはどの本から入るのがお勧めだろうか?また、海外からぽちっとすぐに読めるKindle版はあるだろうか?

amazon.co.jpで検索してみると:

まぁ正直どれでもいい感じである。たとえ現象学とタイトルに入っていなくても、現象学を熱っぽく語るのにページが割かれていることも多い。傾向としては、竹田の方が自分のこと・身近なものとして語ってくれるわかりやすさがあり、西の方がより冷静で学問的、暑苦しさのない感じである。ついでに言うと、彼らのニーチェヘーゲルの本や哲学史全般の本もおもしろいので、そちらから読んでもいいかもしれない。結局のところ、竹田・西は彼らが解きたい現実の課題が明確に存在し、それに光を当てるものとして哲学を説明しているので、それが現象学でもそれ以外でも根底にあるメッセージは共通している。*2

これらの中から敢えて選ぶなら、西の「哲学的思考」がわかりやすく、視点のバランスもよく、レビューの評判からもベストだと思う。一方、哲学書というより教養書のような読みやすさを求めるならおそらく竹田の方がお勧めで、筆者の読んだ「現象学入門」「自分を知るための哲学入門」はちゃんと面白かった。また、特に「哲学なんて勉強したことがない」という人には、わかりやすさに振り切って両氏の共同編集による「はじめての哲学史―強く深く考えるために」もいいと思う。

さて、やっと本題であるが、この中にKindle版はないのか?と見てみると…全然ないのである(´・ω・`)

ぱっと見る限り、西の「哲学は対話する」と竹田の「哲学とは何か」の二冊しかない。両方とも最近のもので「哲学の本来の使命とは何か」に立ち返って書かれており、現象学って何?自分の身の回りの課題解決にどう役に立つの?という(ある意味矮小な)興味で読むと、テーマが壮大すぎて面食らうかもしれない。それでも「哲学は対話する」で扱われている「対話によって(例えば)『正義』についての普遍的な共通認識を確立する」というモチーフは、「現象学によって身の回りの信念対立を克服する」という課題に対して完全に上位互換なので、読んで損はないし、人によってはこちらの方がより本質的で面白いと思うのではないだろうか。

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筆者が西の「哲学的思考」を初めて読んでから20年以上も経っており、彼らの言うことも深みを増して壮大になっていくことは当然であるが、過去に書かれたほどよい入門書の電子化が置き去りになるのはちょっと残念である。

*1:学問的に正統な視点にも興味のある人は、新田義弘の著作が評判いいので読むといいかもしれない。筆者も一冊読んでみたが、まったく興味の対象外だったので人それぞれということだ。

*2:それが学問的には不正確とか偏っているとか批判される所以かもしれない。