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米国カリフォルニアのソフトウェアエンジニアがIT・自転車・音楽・天体写真・語学などについて書く予定。

SpyderX Proでモニターのキャリブレーション

天体写真の色合いの調整などをやる以上、モニターが正しく色を表示しているのか?というのはまぁ気になるといえばなる。実際2台のモニターで色合いが若干違っていて、どちらを信じればいいのかはわからないのだ。

ここで「正しい」というのはどういうことかというと、「画像データのRGB値がこの値のときには、どんな機材だろうが、この色が表示されるべきである」という標準規格があって、自分のPCとモニターがその通りの色を表示していれば「正しい」である。この規格には幾つかあるのだが、一般人がデジタル画像データをやりとりするには sRGB IEC61966-2.1 というのをターゲットにしておけばいいようだ。プロの写真屋や印刷屋はもっと色域の広い規格を使ったりするらしいが、そもそもその色域を表示できる(おそらく高価な)機材を持ってないと意味はないだろう。

正しい色を表示するために、モニターの表示色を実際に測定し、キャリブレーションしてくれる*1ツールがあるらしい。例えばこの SpyderX Pro というのがそれだ。測定マニアとしてはさっそくポチって試さざるを得ない。以下その使用レポートである。

使い方はこんなふうに、USBカメラ風のセンサーデバイスをPCに接続し、センサーをモニターに向けてぶら下げる。そしてキャリブレーションソフトウェアを走らせると、様々なRGB値をセンサーに向けて表示し、実際にどんな色が表示されているかを測定、モニターのプロファイルを解析するという寸法だ。

SpyderXの使い方のノリがわかる写真(メーカーサイトより)

実際に使ってみると、メインモニターの方(DELL U2415)はかなり簡単にキャリブレーションできた。白やグレーは見た目完璧なニュートラルになり、サンプルの写真も美しく表示されるようになった。キャリブレーション前は若干青白っぽかったようだ。

また、自分の好みのモニターの明るさが100cd/m^2やそれ以下であることも定量的にわかった。SpyderXの付属ソフトウェアのデフォルトの設定に従うと、昼間のカーテンを閉めた部屋でも「明るすぎる、もっと暗くしろ」と言われ、モニターのターゲット輝度が200cd/m^2とかに設定されるのだが、これに愚直に従うと眩しくて見ていられない。推奨設定は完全無視し、90~100cd/m^2にすることにした。

次にセカンドモニターの方(DELL S2409W)だが、こちらはキャリブレーション後に全体が緑がかってしまう現象が発生。メインモニターと比べて明らかにおかしい。SpyderX付属ソフトウェアがダメなのかもしれない、とOSSのDisplayCALを試してみた。

displaycal.net

(SpyderXをDisplayCALに認識させるにはドライバを手で入れる必要があることに注意。署名無しドライバのインストールなんて久しぶりにやったな。)

結果は同じく、やはり変色してしまう。なぜだろう。

計測結果を見てみると、そもそもこちらのモニターはsRGBの色域を100%カバーできていないようだ。色域チャート(下画像)を見てみると、メインモニター(左)はsRGBの色域(破線領域)をおよそカバーできているのに対して、セカンドモニター(右)はsRGBの色域の方がモニターの色域をはみ出してしまっている。カバー率95%らしい。

プロファイル測定結果(メインモニターとセカンドモニター)

このモニターは2009年に購入したものでだいぶ古く、RGBフィルターの経年劣化などで輝度が鈍っていたり特性が非線形になっていたりするのだろう。それなら真面目にデータ取ってフィッティングしても意図通りの結果にはならないかもしれない。(それならそれでVerifyしたときに誤差として見えて欲しいものだが、そうならないのは解せない。明らかに白の色がおかしいのにホワイトバランスのエラーに現れないのはなぜ?)

結局、Windowsの標準の手動キャリブレーションツールを使ってメインモニターと見比べながら調整を行ない、同じ写真がおよそ同じように見えるくらいに持ち込むことができた。まぁ科学的ではない主観的な正しさであるが、自分的には満足である。少なくとも一台は正しさが保証されていて拠り所にできる、というだけでも(測定マニアとしては)かなり安心感がある。

*1:モニターのプロファイルを作成してOSにインストールする。それにより、OSが正しい色を表示するよう取り計らってくれる。