hogehoge, world.

米国カリフォルニアのソフトウェアエンジニアがIT・自転車・音楽・天体写真・語学などについて書く予定。

へっぽこ天体写真の鏡筒(その2)

前回の続きでへっぽこの使う鏡筒を紹介するよ。

Borg 36ED

口径36mm・焦点距離200mの超小型望遠鏡である。x1.1専用フラットナーと合わせた時の解像度は素晴らしく、視野が広いのにもかかわらずいかにも望遠鏡らしい像が撮れる。構造がめちゃくちゃ簡単で軽く、ちゃちゃっと気軽にセットアップして撮っても失敗が少なく、さらに撤収も簡単なので、腰の重いへっぽこも「ちょっと暗い空まで持っていってみようか」という気になる。

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Borg 36ED (カメラから分離してるところ)

フラットナー込み焦点距離220mmの視野は結構広く、それでいて解像度も高いので、複数の星雲・星団をそれぞれディテールを保ちつつ一度に収めることができる。

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オリオン座の三ツ星と馬頭星雲周辺
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へっぽこ天体写真の鏡筒(その1)

前回紹介しきれなかったものを含めて、へっぽこが天体写真撮影に使っている鏡筒を紹介しよう。

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Orion SkyView Pro 8" ニュートン式反射鏡筒

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上の鏡筒で撮影したM13ヘルクレス座球状星団

なお本文中の価格は筆者購入時のものであり(2013年~2015年頃が多い)、現在ディスコンで価格が見られないものも多く、記憶に基づくおよその値であることをお断りしておく。

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へっぽこ天体写真のススメ

筆者はへっぽこ天体写真を撮る。ここで「へっぽこ」というのは、ずぼら、あるいはインドア的な性癖ゆえ、天体写真が通常目指すところからズレた(と見做されそうな)方向に向かって努力する姿勢や価値観を指す。例えば下記のような価値観に共感できるなら、あなたにもへっぽこの素質があるかもしれない。

  • 暗い空を求めて遠出するのが嫌い。「どんな高価な機材よりも暗い空」なんてことはわかっているけど、めんどくさいじゃん。代わりに光害カットフィルターやフラット補正に金と労力をつぎ込むよ。
  • 重い機材を持ち運ぶのが嫌い。「マウントがしっかりしてないとそもそもいい像は撮れない」なんてことはわかっているけど、重くて面倒だからと撮らなくなったら本末転倒じゃん。星像が安定しないなら露出時間を半分にして倍の枚数撮ればいいじゃない。細かいブレには目をつぶって、全部コンポジットに放り込んでσクリッピングすればそこそこ見れるよ。
  • 後処理に時間をかける。そもそも質のいいフレームが撮れれば後処理で苦労しなくて済むのはわかっているけど、外は寒いしコントロールできない要素も多いわけで、暖かい室内で現代の高度なデジタル技術と戯れるのに時間を割いてもいいじゃない。いいCPUと大きなメモリを買って、いい画像処理ソフトウェアを入手して、たくさん勉強&実験して、ベストプラクティスを探し出すよ。
  • 美しさよりも「技術の力で見えないものが見える」こと自体に楽しさや喜びを見出す。背景がザラザラとか、カラーバランスが悪いとか、そういうのは気にしないわけではないが二の次だよ。別にコンテストに出すわけじゃないしさ。

特に最後の項目はへっぽこの本質かもしれない。要は「この街中から○○星雲が見えた!何万光年の距離からやってきてレンズに飛び込んで来た光子すげぇ!IDASのフィルタすげぇ!ソニーイメージセンサーすげぇ!デジタル画像処理すげぇ!」というところを楽しむのである。もちろんスタンダードな価値観を否定したいわけではなく、たまに暗い空で撮るのは楽しいし、できれば美しく撮るに越したことはない(筆者も自分のベストを選んだら暗い空で撮ったものばかりになる)。ただ「このマウントはやわですね」とか「星の色がつぶれてますね」とか無邪気に行ってくる輩に対しては、「天体写真を趣味とする人々の中にはこのようなへっぽこが存在するんですよ」と教えてあげたくなる。ごちゃごちゃ言わず、こういうの↓が撮れたら単純に楽しいでしょ?

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M42オリオン大星雲

なお、へっぽこは「要求水準が低い(=いいかげん)」とか「努力や出費を惜しむ(=怠ける)」こととは異なる。むしろ価値観や欲求が独特であり、それを満たすために独自の探求やDIYを余儀なくされるため、結局人並以上の労力やお金がかかることもままある。投資や手段がその時々の自分の目的や身の丈に合っているかどうかは気にするが、トータルで割安かどうかはあまり意に介さない、というのもへっぽこの性質の一つと言えるだろう。

このようなスタンスで天体写真を趣味としている人間は世の中で筆者だけだろうか?もし他にいるとしたらそのような人々を元気づけることはできないだろうか?そういった考えからへっぽこ天体写真記事を書いてみる次第である。「私もへっぽこかもしれない」「そういうへっぽこなら私も興味がある」という方々のお役に立てれば幸いである。

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トンガの火山噴火による気圧変化(続き)

前回に続いて気圧変化を観察していると、また急激な変化がちょいちょい現れている。また噴火したのかと思ったら、どうやら地球が丸いかららしい。

前回示したのは最短距離で最初に到達した波(1)だが、その次に地球の反対側を回ってやってくる波(2)があったようだ。(1)はおよそ8,500kmを8時間でやってきたので、地球一周40,000kmとすると反対周りはざっくり31,500kmを28.6時間かけてやってくる勘定になり、ちょうど計算通りの位置に急激な上下動が現れている。さらにその後、最初の波(1)が地球を一周して36時間後(3)に再びやってくるはずだが、ここはタイミングぴったりではなく2時間ほど早めに大きな変化が記録されている。この理由はよくわからない。

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トンガの火山噴火による気圧変化

トンガで大きな火山噴火があったが、うちの気圧ログにもその影響が記録されていた。横軸はUTC時刻、縦軸の単位はhPaである。

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下記ツイートによると、噴火時刻が15日4時(UTC)、衝撃波の速度が1100km/hとのこと。現場からカリフォルニアまで約8500kmなので、8時間後の12時に気圧の急激な上下が記録されているのとちょうど合う。さらに14時頃に現れて減衰する振動も、普段はこんなデータ見ないので、余波のようなものだろうと思われる。

あちこちで公開されている衛星からの映像を見ても、これが尋常でない規模であることが見て取れる。影響・被害を受けた方々が無事に乗り越えられることをお祈りします。

「激怒した開発者によるcolors.js/faker.jsの意図的な破壊」に関する所感

こんな↓ニュースを目にして何が起こっているのかをざっとさらってみたのだが、うーむ、同情の余地はあれど、これに thumbs up や無邪気な擁護が付くのはちょっと理解できない。

gigazine.net

別にMarak氏やその擁護者を叩きたいわけでもなく(私が何か言うまでもなく彼の行為は普通に裁かれるだろう)、ただなんだか違和感があったので、自分の得た情報と理解の整理のためにここに書いてみる。

本件の構造を別のたとえに置き換えてみると、こういうこと↓に見える。

  1. 「ご自由にお取りください(=MITライセンス)」と自分で作った野菜を道端に置いた
  2. その野菜が評判になり、それを使ってぼろ儲けするレストランも出てきた
  3. これらのレストランが「野菜のかたちが悪い」「傷があった」、その挙句「なんとかしてくれ」と言ってくるようになった
  4. 「そんなの無報酬で対応できるかよ。自分でなんとかするか、相応の報酬をくれ」と表明した
  5. (その後何があったかわからないが)ついに激怒して、野菜に毒を入れた

(1)~(4)はまぁそういうこともあるだろうという事象だが、そこから(5)に行ってしまうというのはテロと同じ行動原理だと私は考える。レストランがいかに厚かましかったとしても、あるいはその毒が臭いをちゃんとチェックすれば(=テストをちゃんと書いていれば)わかるものであったり、食べても簡単に死にはしないものだったとしても、「ちょっとした警告です、おふざけです」で済ませる気にも「いいぞいいぞ」と応援する気にもならない。

npmリポジトリがこのバージョンの公開を停止したが、それは当然の処置であろう。GitHubがMarak氏のアカウントを凍結したのも、なんでそんなことをするんだという声も見かけたが、「作者の立場を利用してマルウェアを仕込んだハッキング/サボタージュ/サイバーテロ行為」とban認定されても何の不思議もない。「自分のコードを好きにして何が悪い」的な擁護は成り立たないだろう。

経緯の面で私が理解に苦しむのは、Marak氏は(4)のあたりでスポンサー集めに取り組む*1など理性的な対応をしていたのに、結局(5)のような無差別的で問題解決にならない破壊的行為に至ったことである。タダ乗りする連中の要求に付き合いたくないのであれば単に無視する権利はあったわけだし、タダ乗りを手っ取り早く合法的に懲らしめたいならライセンスをMITから「商用の場合は有償」という文言に変える手もあっただろう。もしくはサポートに対して本気でお金が欲しいのであれば、企業との間で契約を交わすなど最低限のオペレーションは必要で、金をよこせとissueで愚痴っても何も解決しない*2。いろいろ事情はあったのかもしれないが、ぱっと見る限り「(価値を提供して相応の対価を得るという広い意味での)ビジネスパーソンとしてやるべきことをやらず、短気に任せてテロに手を染めた」という印象なので、これを英雄的に持ち上げるのは理解できない。(火災で大変な目にあったという話もあるが、これはもちろん擁護にはならない。)

つまり、私にはこれは、背景に同情の余地はあるものの「ついカッとしてやった」という通り魔やテロの一種にしか見えないのである。これに「いいぞもっとやれ」「君は英雄だ」のような無邪気な擁護が意外に多くて違和感を感じたので、当たり前のことだと思いつつ書いてみた*3。なお、「同情の余地」の部分というか、「OSSとそれを利用する企業が抱える歪」のような問題は確かに存在するのだが、本blogでそこに踏み込むのは(そういう議論を公にしたくて書いているのではないので)やめておく。

*1:実際幾つかのの会社から支援を取り付けていたように見える。

*2:記事はMarak氏が(彼の気に入らない利用者に対して)「警告」したかのようになっているが、私の見る限り、「自分は彼らのためにタダで働くことはしない」とお気持ち表明しただけである。警告というのは「こういう使い方はライセンス規約にこのように違反しているので、そういう使い方をしている連中は罰を食らうであろう」のように論拠を持って相手の是正を促すものだと私は考える。そのような手を講じていなかったのなら、私の目には無警告の無差別テロと同種であり、被害を受けた側を「警告を守らなかったからだ、ざまあみろ」などと批判する気は一ミリも起きない。

*3:こういう当たり前のことを発信しないと「だからOSSは未成熟だ、作ってるやつも支援してる奴もガキんちょだ」などとあらぬことを言われてしまうのではないか、という危惧も若干ある。

皆既月食とさそり座

5/26の皆既月食は日本ではだいぶ条件が悪かったようだが、ここベイエリアでは西の空低くしっかり見ることができた。

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今回の皆既月食は時間が4amということもありパスしようと思っていたのだが、位置を調べてみるとさそり座の頭の付近だったので、これは絵になるんじゃないかと思い頑張ってみたら意外とよく撮れた。左の方の赤い星がアンタレスである。普段は満月と背後の星は一緒に撮れない(星がかき消されてしまう)ので、こういう画は皆既月食ならではなのである。

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